ストレスによるニキビ発生のメカニズム
それでは、ここからはなぜストレスによってニキビが出来やすくなるのか…について解説しておくことにしましょう。まずは“ストレスは美容の大敵”という言葉が科学的に確証の取れた表現であることをご理解いただき、ニキビ予防に役立てていただければと思います。ニキビ発生のメカニズムを知れば“そのメカニズムを止めることでニキビ予防が出来る”という知識を得ることに直結しますから、予防法、治療方法の取捨選択にも役立つはずです。
ストレッサーとは、ストレス反応を起こす物質!
ストレッサーによってストレスが生じると身体はストレス反応を示します。要するに、ストレス反応とは、普通は一定に保たれている生体バランスがストレッサーによって崩れ、そこから普段の状態へと戻していくための過程のこと。多少のストレスであれば、身体の適応力を維持するために有益なので快ストレスと呼ばれますが、過剰なストレスであれば心身のバランスを大きく損なってしまうのです。
ストレス反応ってどんな反応!?
過剰なストレスを受けると、脳の間脳という場所にある自律神経、内分泌を司る働きを持つ“視床下部”に影響が及びます。これ自体は正常な反応で、ストレスを受けるということは生物学的には危険、不快な状態にあるということですから、その危険に対応するため、身体の機能を昂進させることが目的。しかし、この時に脳下垂体、副腎皮質から男性ホルモンが分泌されたり、自律神経のうち興奮を司る交感神経が活発になることでノルアドレナリンが増加したりすることが、肌にとっては大きな問題になってしまいます。
ストレスは脂性肌&角栓の原因に!
ストレスを感じたときに発生する男性ホルモンやノルアドレナリンは皮脂の分泌を促す働きがあるため、ストレス反応が持続すると脂性肌になってしまいます。また、男性ホルモンには肌を固くしてしまう性質もあり、毛穴が収縮して詰まりやすくなるのです。こうして皮脂が正しく代謝されなくなると、詰まった毛穴に皮脂が溜まり、その皮脂の中で悪玉アクネ菌が増殖して炎症を起こす…いわゆるニキビが出来てしまうわけです。
文献:ニキビと炎症後色素沈着の心理社会的な影響
Psychosocial impact of acne and postinflammatory hypoerpigmentation
An Bras Dermatol. 2017 Jul-Aug;92(4):505-509. doi: 10.1590/abd1806-4841.20175645.
Katlein Franca1 2 3 Jonette Keri2
1 皮膚科・皮膚外科;マイアミ大学ミラー医学部 – マイアミ (フロリダ州)、米国。
2 精神医学・行動科学;マイアミ大学ミラー医学部 – マイアミ (フロリダ州)、米国。
3 生命倫理、医療政策研究所マイアミ大学ミラー医学部 – マイアミ (フロリダ州)、米国。
目的
この研究の目的は、マイアミ大学病院の皮膚科外来クリニックでニキビの治療を受けた患者の、炎症後色素沈着の心理社会的な影響を調査したものです。
メソッド
研究は、にきびや炎症後色素沈着症例 50例です。ニキビによって生じる炎症後の色素沈着に対する患者への質問を含む匿名アンケートで実施しました。
結果
炎症後色素沈着は、顔に多くみられた。患者の大半はニキビで恥ずかしい思いはしているものの、メークアップで隠すことでニキビの不利をおぎなっていました。興味深いことに、患者の大半は、ニキビや炎症後色素沈着は、生活の質に影響を与えませんでした。
結論
ニキビの心理的影響を分析した研究は、最新の医学文献には多くあります。本研究は、ニキビ、ニキビによる炎症後色素沈着の心理社会的な影響を分析した文献で初めての研究でした。
文献:成人女性の座瘡および関連する危険因子
J Am Acad Dermatol,2016 Des;75(6):1134-1141
大人のニキビはストレスや果物・野菜・新鮮な魚の摂取に関係する。
成人女性の座瘡および関連する危険因子:イタリアにおける多施設症例対照研究の結果。
Di Landro A 1 、 Cazzaniga S 2 、 Cusano F 3 、 Bonci A 4 、 Carla C 5 、 Musumeci ML 6 、 Patrizi A 7 、 Bettoli V 8 、 Pezzarossa E 9 、 Caproni M 10 、 Fortina AB 11 、 Campione E 12 、 Ingordo V 13 、 Naldi L 14 ; 皮膚科学における疫学研究のグループアクネ研究グループ 15。
目的
成人女性の座瘡における個人的および環境的要因について検討した。
方法
イタリアの12都市の外来診療部門で多施設の症例対照研究を実施した。 症例(n = 248)は、25歳以上の大人ニキビの女性で、対照(n = 270)は、ニキビがないと診断された女性であった。
結果
多変量解析では、親(OR = 3.02)兄弟にニキビがある(OR = 2.40)、思春期ニキビだった(OR=5.44)、妊娠したことがない(OR = 1.71), 多毛症 (OR = 3.50)、失業者か主婦(OR = 2.24)、高いレベルの心理的ストレス(OR = 2.95)を有する職場労働者は、すべてニキビに関連していた。 果物または野菜の週の低摂取量(OR = 2.33)および新鮮な魚の低消費量(OR = 2.76)も、ニキビに関連していた。 (OR:オッズ比=ニキビの危険度)
制限事項
私たちは、ニキビの発症日を確定しませんでした。 私たちの組織の中には、確立されたニキビの結果を反映するものもあります。
結論
生活習慣因子は成人期のニキビの発育にとって重要な役割を果たすかもしれないが、それらの役割は将来の研究でさらに評価されるべきである。
ストレスによるニキビ発生のメカニズム〜まとめ
ストレスを感じたときに起こる生体反応によって、男性ホルモン、ノルアドレナリンといったものが分泌されてしまい、これが皮脂の増加を促します。さらに男性ホルモンは肌の角化異常を引き起こして皮膚を固くしてしまい、毛穴が収縮することで角栓による毛穴詰まりの原因にもなるのです。こういった理由から、過度のストレスを受け続けるとニキビが出来てしまう…というふうに言われているわけですね。
相澤皮フ科クリニック 院長
相澤 浩/ あいざわ ひろし
新しい「大人ニキビ」というフィールドに、追求心と探究心からのめり込んでいきました。初めての試みに、最初は試行錯誤の連続。それでも、こうして大人ニキビ治療を続け患者様から信頼されているのは、ホルモン研究を続けてきた産婦人科専門医としての経験と実績があるからこそです。産婦人科と皮膚科の両方の知識がなければ、成しえなかった結果です。
ストレス社会の現代では、「大人ニキビ」で悩む人がさらに増えていくことが予想されます。これまでに診察をしてきた初診患者は7万人以上。この貴重なデータをもとに、一人でも多くのニキビに悩む方々のために研究を重ねていきます。